Feline Journey( ONE PIECE )
第1章 🐾
暗い店内に、ランタンの最後の灯りがゆらゆらと揺れている。
体を伸ばし、潮の匂いが染みついた髪を軽くかき上げる。
昔を思い出すとなんだか懐かしくなった。
あの漂流した日、塩まみれで倒れ込んだ浜辺。
マスターの優しい声と、温かいスープの味。
父の土産話のように、遠い国の話をしてくれたマスターの笑顔。
もしこの街を離れるなら、マスターにはしっかり恩返ししなきゃなぁ……。
はカウンターの隅に置かれた古い帳簿をそっと開く。
この店は色んな所にガタがきている。
壁の木は湿気で反り、床はところどころ軋む。
カウンターの端は欠け、棚の蝶番は緩んでいる。
マスターが体調を崩す前は、自分で少しずつ直していたけど、今はもう手が回らない。
改装費用を渡したら、受け取ってくれるかなぁ。
……マスターのことだから、きっと受け取らないかもなぁ。
「お前が持ってけよ」って、笑って押し返してくる顔が目に浮かぶ。
でも、それでもいい。マスターのために何かをしたいと思った。
ふと、視線が窓の外へ。 停泊している船が見える。
無邪気で、底知れぬ強さを秘めた、あの船長。
……3000万。
麦わらを狩るか。
は静かに息を吐いた。
胸の奥で、何かが決まる。
最後のグラスを拭き終え、布巾を畳む。
カウンターに肘をつき、暗闇の中で瞳を細める。
――明日。
夜が来たら、動く。
彼らは、今頃何をしているだろう。
肉を食べて、笑って、冒険の話をしているのだろう。
は小さく笑った。
店内の灯りが、最後の一つも消えた。
猫の姿になり、カウンターの上を軽やかに歩く。
尾をゆらりと揺らしながら港へ視線を投げた。
波の音が、優しく響いていた。