Feline Journey( ONE PIECE )
第1章 🐾
翌日、日が沈み始めた頃。
船内のざわめきが、少しずつ静かになっていく。
甲板の足音が遠ざかり、船員たちは酒を飲み疲れて寝静まり始めた。
は物置部屋の隅で、膝を抱えたまま息を潜めていた。
心臓の鼓動が、耳元で大きく鳴り響く。
外の波音が、まるで自分の呼吸を嘲笑うように繰り返す。
――今だ。
ゆっくりと立ち上がり、震える指で扉に手をかける。
音を立てないよう、指先でそっと押し開く。
隙間から廊下を覗く。
薄暗いランタンの光が揺れ、影が長く伸びている。
誰もいない。
息を止めて、一歩ずつ進む。
足の裏が冷たい床に触れるたび、体が震える。
壁に体を寄せ、影に溶け込むように。
宝物庫の扉の前まで辿り着く。
昨日と同じく、見張りはいない。
鍵も、かかっていない。
意を決して、扉に手をかける。
――ギィーっ。
小さな軋み音が、夜の静寂に鋭く響いた。
体が凍りつく。
心臓が喉まで跳ね上がる。
耳を澄ます。
……誰も来ない。
足音も、声もない。
大丈夫だ。
中へ滑り込む。
埃っぽい匂いと、金貨の金属臭が鼻を突く。
奥の方、積み上げられた樽の上に、古びた宝箱が一つ置いてある。
震える指で蓋を開けると、その中にはひとつの大きな果物が入っていた。
真っ黒で表面に小さなくるくる模様が無数に渦巻いている。
形は……動物の耳のような、丸くて少し尖ったものがついている。
なんだか、ちょっと可愛い。
これが、悪魔の実。
は迷わず手に取った。
意を決して、かじる。
……不味い。
吐き気がするほどの、苦さと酸っぱさが口いっぱいに広がる。
舌がしびれ、喉が焼けるように痛む。
でも、止まらない。
これが自由になれる手段だ。
夢中になって、むしゃむしゃと食べた。