第4章 『やくそく』
「め、恵くん……」
「おい、露骨に嫌そうな顔すんな」
胸が、ぎゅっと縮む。
五条さんに怒られるのは、正直覚悟していた。
でも、恵くんに——恵くんに何か言われるなんて、全く想定していなかった。
そもそも一緒に帰ってきたということは、恵くんは五条さんと私の尻拭いをしてくれたということ。
……つまり、私は恵くんの足を引っ張ってしまった。
「迷惑かけて、ごめんなさい…」
怒られる前に言わなきゃ、と肩をすぼめ、スカートの裾を強く握りしめ、頭を下げようとした——その時。
「……お前が無事でよかった」
そう言いながら、恵くんは何かを堪えるみたいに ぎゅっと拳を握った。
その短い一言に、胸の奥が一気に苦しくなる。
津美紀ちゃんを想う気持ちは、私なんかより恵くんの方がずっと大きい。
それなのに——私の無事まで、当たり前みたいに願ってくれていたなんて。
「ごめ、なさ…っ」
「……泣くな。俺は別に、怒ってるわけじゃない」
わかってる。
怒られているわけじゃないって、わかってるのに、涙が止まらない。
余計な心配をかけた。
恵くんが気にしてくれていることは、病院を出た時から、わかっていたはずなのに。
私は自分の気持ちばかりを優先して、結果的にたくさんの人を巻き込んで、迷惑をかけて。
それが不甲斐なくて、申し訳なくて。
——それなのに、涙に逃げてしまう自分がひどく恥ずかしかった。