第4章 『やくそく』
「…私は、呪物……なんでしょうか、」
自分でそう口にして、胸の奥がひどく冷えた。
否定してほしかったのか、それとも肯定された時に壊れないための予防線だったのか——自分でも分からない。
「さあな。そういうのは私には分からん」
「…そう、ですか」
帰ってきたのはそのどちらでもなく、それ以上言葉は続かなかったけど、何となくわかる。
昔から自分は変だと理解していた。
桃色の髪も、緋色の瞳も、両親とは似ても似つかない。
呪術師でもなければ神社の血縁ですらない家に生まれた私は、突然変異のように力を宿し、誉高い"神子"として生かされた。
─── こんなのは、普通の人間じゃない。
そう何度も考えては思考を振り払った。
自分は人間だと、何度も言い聞かせた。
でもこんな話を聞いてしまったら────もう自分を人間だと言い聞かせていいのか、分からなくなる。
「何はともあれ、アンタのお陰で東京は暫く閑散期だ」
そう言って、硝子さんは私の頭をぽん、と軽く叩いた。
「呪霊が他に攻撃しなかった分、私の仕事も減ったし」
助かったよ、と続けて、今度は少しだけ力を抜いた手つきで私の頭を撫でた。
ちらりと硝子さんを見上げると、ちょうど大きな欠伸を零したところだった。
こうしてよく見ると、目元の隈も深い。
眠れていなかったんだ、と今さら気づき、ベッドから降りようとした時。
「事情が事情だ。無理するな、とは言わない」
独り言みたいに硝子さんが呟く。
それは私に向けているようで、私以外の誰かにも伝えるような、優しい声音。
「でも無茶はするな。取り返しがつかなくなってからじゃ、遅いからね」
そう続けた硝子さんは、口元にほんの少しだけ笑みを浮かべていた。