第4章 『やくそく』
「それだけじゃないだろ」
硝子さんの声が、私の思考ごと空気を切った。
「大量の呪霊が、お前を喰うために集中する」
「え……」
言葉の意味が追いつかず、息が詰まる。
不意に上がった視線が硝子さんと絡んだ。
────なに、それ。
そんなの、私は知らない。
「その様子だと、気絶した後のこと知らないだろうから言うけど」
呼吸も忘れて固まる私の隣に腰掛けた硝子さんは、天井に視線を移して続ける。
「気絶したアンタの身体に呪霊が集まってた。甘い匂いに誘われた虫みたいにね」
「っ…!」
ベッドを軋ませて硝子さんの方へ身体を向けるが、硝子さんは変わらず涼しい表情で私を見ていた。
「……あの、補助監督さんは?」
自分の術式にそんな副作用があるなんて知らなかった。
私に呪霊が集まっていたなら、同行していた"彼女"は。
また、私のせいで誰かが傷ついていたら——。
「心配しなくても、周りに被害はなかったよ。アンタにしか興味を示さなかったらしいし」
「………よかった、」
「でも、あそこでアンタが喰われてたら話は別だ」
ほっと胸を撫で下ろす間も与えず、硝子さんは言葉を重ねた。
「群がるってことは、呪霊が取り込むことでメリットが生まれる存在ってことでしょ」
ごく、と喉がなる。
この話の続きを、聞きたくないと思ってしまった。
「────例えば、宿儺の指とかな」
ああ、やっぱり。
呪術師をやっていれば嫌でも分かる。
それが、どれほど凶悪な"呪物"なのかを。