• テキストサイズ

【呪術廻戦】呪いの嫁入

第4章 『やくそく』


「……っ、ごめ……」


ナマエの顔がゆっくりと持ち上がり、涙で濡れた熱い頬が俺の手のひらに小さく擦れた。

ナマエの潤んだ瞳が俺を見あげ、生ぬるい空気が場を包んだ時。


「恵にしては頑張ったね。うん、及第点だけど」


五条さんの軽口に、張りつめていた空気がほんの少しだけ緩む。


「…ちょっと黙っててください」
「はいはい」


五条さんは軽く両手を上げ、一歩だけ距離を取った。

そんなやり取りの隙間で、ナマエの嗚咽が、少しずつ静まっていく。


ナマエが落ち着くまで、俺は手を離さなかった。

抱きしめることはしない代わりに、お前の傍には俺がいると伝えるように。


───無事でよかった。


そしてその言葉を、もう一度、胸の中で繰り返した。









「さてと」


乾いた音を立てて、五条さんが軽く手を叩きながら呟いた。

その音に引き戻されるように、俺はナマエの頬から手を引く。
指先に残った感触は、できるだけ意識しないようにした。


「恵は念のため硝子に診てもらってきな」


相変わらず軽い口調なのに、有無を言わせないところが五条さんらしい。

俺は返事の代わりに小さく頷き、ちらりとナマエに視線を向けた。


「ナマエは僕と"お話"だ。いいね?」
「……はい」
「ん、いい子」


五条さんからの鋭い視線が向けられた瞬間、ナマエの身体がほんの僅かに強張る。

"話"の内容が気にならないわけじゃない。
けど、それを今ここで聞くのは違う気がして、俺は何も言わなかった。


「…行ってくる」


そう告げて足を踏み出すと、ナマエは眉尻を下げ、心配そうにこちらを見る。


「…大丈夫だ。怪我してねぇから」


それは事実でもあったし、何より───ナマエの顔を曇らせたままにしたくなかった。

案の定、ナマエは少しだけ目を瞬かせて、眉尻にかかっていた力が ほんのわずかに緩む。


「じゃあな」


その表情に、ようやく息を吐いて足を踏み出せた。

そして医務室へ続く廊下を歩きながら、さっきまで触れていた頬の温もりを、意識の奥へ押し込んだ。
/ 377ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp