第4章 『やくそく』
「随分派手にやったな」
ヒールで砂利を踏み鳴らしながら現れた硝子は、瓦礫と抉れた地面を一瞥し、呆れたように肩をすくめた。
「ナマエ、見せて」
硝子は僕の前に立ち、腕の中のナマエをちょん、と指差す。
軽く頷いたあと、僕はその場にしゃがみ込み、ナマエを静かに地面へ寝かせた。
「コレ治せる?」
「…」
もう一度ナマエのシャツを捲り上げ、硝子に確認させる。
すると硝子は一瞬だけ悩むように唸った後、直ぐに首を横に振った。
「無理だな、内側から広がってる。治した所で直ぐに元通りだ」
「だよねぇ」
「ナマエを起こして止めさせるのが最善だと思うけど」
その言葉に、小さく息を吐く。
硝子が言うなら間違いないだろう。
「……ナマエ、起きて」
額にかかる髪を払い除けながら名前を呼ぶ。
暫く名前を呼び続けると、ナマエの瞼がピクリと動き、ゆっくりと持ち上がった。
「…ご、じょう、さん」
薄く開かれた瞼から覗く紅い瞳。
焦点は合っていないけれど、それはしっかりと僕を見据えていた。
「いッ…、」
細かな傷のせいか、それとも腹の"それ"のせいか。
ナマエは顔を歪め、小さく息を詰めた。
「起きて早々悪いけど、術式、解除できる?」
「………?」
一度首を傾げてから、こくりと頷く。
多分、正しい手順なんて分かっていない。
それでもナマエは無闇に力まず、深く呼吸を整えた。
——結果、それが正解だった。
次の瞬間には、腹部に蠢いていた目も、口も、跡形もなく消えていた。
「よし、偉いね。さっすが僕のナマエ!」
わしゃりと髪を撫でてやると、ナマエは力の抜けた笑顔でふにゃりと笑った。
「他に痛むところはあるか?」
僕の手を払い除け、ナマエの頭を柔く撫でながら硝子が問う。
ナマエは額に冷や汗を滲ませながらも笑顔を作って、ふるりと首を横に振った。