第4章 『やくそく』
補助監督に支えられながら歩き出すの背中を見送り、僕は一度だけ目を伏せる。
足音が遠ざかるのに合わせて、空気に残った違和感だけが妙にしつこくまとわりついていた。
(……さて。このの残穢、どう誤魔化すかな)
──の術式は、本来"自身の呪力が付与された物体"を操作するもの。
昔は服を使っていたけれど、流石に任務の度にはだけるのは不憫だと思った僕は、
が気に入っていた巫女装束の一部を使い、彼女の瞳の色と同じ鮮やかな赤のリボンを贈った。
以降、はそれを拘束具のように両腕に巻き付け、肌身離さず持ち歩いている。
……だけど、さっきのが呪力を巡らせていたのはそんな可愛い代物じゃない。
骨
筋肉
血
────それは、自身の肉体そのもの。
まるで身体を壊す前提で、使い潰すみたいに呪力を付与して、身体能力を底上げしていた。
術式の理屈、使い方としては間違ってはいない。
しかし、あの腹の穢れが戻らなければ──は、自分の呪力に呑まれていた。
「……誰の入れ知恵だ?」
吐き出した呟きは、冷えた夜気に溶けて消える。
それと入れ替わるように、背後で硬い砂利を踏む音が響いた。