第1章 旅立ち
「あ〜……神社の階段って、何でこうも長いのかな。所々欠けてるし、幅も狭いし」
「お、仰る通りで……」
鳥居を目指して、僕と伊地知は長い長い階段を上っていく。
僕ひとりだったら とっくに駆け上がって終わってるんだけど。
でも伊地知が一緒となると、そうもいかない。
この村に、まだ誰がいるのか。
────いや、何がいるのかすら把握しきれていない。
流石にここで伊地知を置いていって、万が一死なれでもしたら寝覚めが悪い。
仕方ないから、弱っちい補助監督の護衛役を買って出てあげてるわけ。
……ほんと、感謝してほしいよね。
「や、やっと着きましたね。この辺りから残穢が流れて……あっ!!」
鳥居の下に先に辿り着いた伊地知が、突然言葉を切って走り出した。
(いや待て。死にたいの?お前)
内心で呆れつつ、僕も少しだけ速度を上げる。
姿を消した伊地知の背中を追って、階段を上りきった、その先。
「っ、大丈夫ですか……!?君!!……ああ、意識が……」
目に飛び込んできたのは、焦った様子の伊地知と、その腕に抱えられた小さな身体だった。
伊地知は慣れない手つきで首元に指を添え、脈を確かめ、続いて鼻の下に指を近づけて呼吸を確認している。
僕が近づくと、伊地知はハッと顔を上げ、腕の中の存在をこちらに示した。
「あっ、ご、五条さん……!生存者です!!意識はありませんが、呼吸はあります……!」
「見りゃわかるよ」
ほんの少しだけ、伊地知を評価しつつ、僕は膝を折って腰を落とした。
差し出されるようにして見えたその子は、すぅすぅと小さな寝息を立てている。
巫女装束に身を包んだ、幼い少女。
白が多く混じった淡い桃色の髪は血に濡れて固まり、白い頬にべったりと張り付いていた。
僕はそっと、少女の顔にかかった髪を払って、その頬に触れる。
血のせいで指先はべたつき、ところどころ皮膚の感触が歪んでいる。
それでも構わず、汚れを拭うように、ゆっくりと頬を撫で続けた。
「んっ……、」
しばらくして、違和感に気づいたのか、少女の眉がぴくりと動く。
「あ、起きた?」
僕は頬から手を離し、代わりにずいっと顔を近づけた。