第4章 『やくそく』
視界の限りの呪霊は全て祓った。
の意識は戻らないままだが、呼吸だけが不安定に乱れている。
『ミテ、ミテ〜!!』
…それに、さっきからの"身体"がヤケに煩い。
既に分かっている。この服の下がどうなっているかくらい。
それでも────事実確認は必要だ。
「、ごめん」
意識のないにそう告げてから、スカートの中に押し込まれていたシャツを静かに引き抜く。
『ァ〜……アハッ』
───目が、合った。
顕になったの腹部には、呪霊の顔のようなものが歪に浮かび上がっている。
恐らくこれは、の術式の副産物。
しかし、このまま放置すれば いずれ完全に"定着"する類のものだ。
「硝子は?」
「間もなく到着予定です…!」
僕の任務に同行していた補助監督へ目配せをすると、彼は片手に携帯を握りしめたまま、強く頷いた。
恐らくこれは反転術式でも治せない。
それでも、の身体に残った細かな傷くらいは処置してもらえるだろう。
重体の術師が他にいなくて助かった。
あの異様な呪霊の動きが、に引き寄せられていたのだとすれば——当たり前の結果かもしれないけど。
「祓い零しは?」
「付近に数十体いるようですが、こちらに向かっていた術師が各自対応中です。伏黒くんもいらっしゃるようです」
慌てて端末を操作しながら、補助監督は端的に報告する。
その手際の良さが、余計にに付いていた女の仕事ぶりを浮き彫りにした。
「君、今日この子と合流してからの行動、全部言える?」
「えっ」
「の任務に着いてたんでしょ。さっさと言えよ」
「え…と、」
言えないだろう。
全部、最初から分かっていた。
だからこそ、圧をかけた。
────僕はお前に少しの興味もない。
その事実だけが、きちんと伝わるように。
「ご……5、6件、任務に、」
「へえ」
僕がもう一度目配せをすると、補助監督はまた端末を操作し始めた。