第3章 交錯する想い
それから三日。
傷は硝子さんの反転術式で跡形もなく消えた。
都合よく記憶まで消えてくれるわけじゃないけれど、反転術式にそんな効果はないのだから仕方ない。
「、転校しようか」
「え……」
出張から帰ってきた五条さんは、任務で汚れた上着を脱ぎながら、なんの前触れもなくそう言った。
「え? だって危ないし。僕、心配だから!」
にっこりと満面の笑みを浮かべて、軽い調子でそう言う。
——ああ、やっぱり。
あの日のことは、恵くんから聞いたんだ。
五条さんは私の頭をぽん、と撫でてから廊下の奥へ歩き出し、私は慌ててその背中を追った。
「転校先は恵の中学ね。津美紀もいるし、安心でしょ」
「あの、……」
足早に進む五条さんを引き止めるように声をかけると、五条さんは少しだけ歩調を緩め、振り返った。
「……ごめんなさい。私、迷惑かけて」
せっかく用意してもらった学校だったのに。
私の勝手な行動で、また余計な手間を増やしてしまった。
「迷惑〜?? なあに言ってんの」
間延びした声と一緒に、影がふわりと覆いかぶさる。
見上げると、五条さんが目元の包帯を解きながら、いつも通りの笑顔でこちらを見下ろしていた。
「親が子供を心配するのは、当たり前でしょ」
——親。
その言葉が胸に落ちて、じん、と広がった。