第3章 交錯する想い
───
──────
予め五条さんから聞いていた電子キーの解除番号を入力すると、電子音のあと、すぐに鍵が外れる乾いた音がした。
その音を合図に、一度だけ深く息を吸う。
そして部屋に足を踏み入れた瞬間、吐いたばかりの息を思わず飲み込んだ。
の靴が、荷物が、玄関に乱雑に散らばっている。
綺麗好きとまでは言わないが、少なくとも、こんなふうに物を放り出す性格じゃない。
胸の奥が、ひどく嫌な予感でざわついた。
「……ッ、まだ……感触も、感覚も……全部、残ってる……!」
「……、」
考えるより先に、身体が動いていた。
妙に反響するの声を頼りに、慌てて脱衣所に駆け込む。
初めて足を踏み入れたそこには、の服が脱ぎ捨てられている。
そしてその奥。磨りガラス越しに、白く霞んだ影が揺れていた。
小さく、丸まるようにして——が、泣いている。
「いや……やだ。……見捨てないで、…嫌いに、ならないで」
縋るような声だった。
さっきよりもずっと小さくて、震えていて、…その声に、心臓が握られたように胸が締め付けられる。
「…今更、嫌いになれるわけないだろ、」
気づけば、声が零れていた。
お前を見てきた。隣で、ずっと。
笑った顔も、怒った顔も、泣き顔も───全部、知ってる。
俺がそれを守りたいと、そう思ったから───
「っ……、もっとちゃんと、巫女様やるから…っ!!!」
「!!」
傷ついているなら、傍にいる。
壊れそうなら、俺が支える。
俺はもう、お前を守ることを躊躇わない。誰よりもお前の味方でいる。
だから——どうか、笑ってくれ。