第3章 交錯する想い
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に突き放されたあと、
俺がどれくらいその場に立ち尽くしていたのかは分からない。
気づいた時にはロビーにの影はもうなくて、エレベーターの現在地を示す表示だけが『33』の数字を淡く灯していた。
(俺じゃ、ダメだ)
今のに男が近づくのは、きっと逆効果だ。……それが俺なら、なおさら。
昨日突き放したのは俺だ。
言葉を選ばず、距離を取る理由も告げず、勝手に壁を作った。
その結果が、今だ。
(女の人……家入さん、か)
呪術師の事情を理解していて、とも俺とも信頼関係がある。
思い浮かんだのは、たった一人だった。
ただ、連絡先は知らない。高専にいるとは聞いていたが、高専の連絡先すら分からなかった。
——それなら。
俺は迷わず、携帯を取り出した。
『恵から電話なんて珍しいね〜。どした?』
呼び出し音が鳴るより先に、通話が繋がる。
軽い声の向こう側には、まだ呪霊の気配が混じっているのが分かる。
結局、呪術師に理解があって、
連絡先を知っている人間なんて、伊地知さんか——この人しかいなかった。
は嫌がるだろうが、一応保護者でもあるのだから間違ってはいないだろう。
「五条さん、……あの、」
知っていることだけを話した。
昨日、を避けていたこと。
今日、駆けつけてからの数分間の出来事。
全部を把握しているわけじゃない。それでも、伝えられる範囲は誤魔化さずに話した。
通話の向こうで、時折、ミシリと音がした。携帯を強く握っている音だ。
……俺も、同じ気持ちだった。