第3章 交錯する想い
───── これが、私の村での言い伝え。
だけれど私は、神子様のように皆を守ることが出来なくて。それどころか1人だけのうのうと生き残り、穢れてさえしまった。
「……落とさなきゃ、せめて私は、綺麗でいなきゃ」
いつか憧れた、貴女のように。
───── ゴシ、ゴシ、ゴシゴシゴシゴシ。
皮膚とタオルが擦れ合う音が、浴室に虚しく響く。
真っ白だった泡はいつの間にか紅を孕み、淡い桃色へと変わっていた。
だけどそんなことはどうでもいい。
私は綺麗でいなきゃいけない。
「……ッ、まだ感触も、感覚も……全部、残ってる……!」
泡の色が濃くなるたび、呼吸が乱れる。
息が吸えない。吐けない。
それでも、手は止まらなかった。
「いや……やだ。見捨てないで、…嫌いに、ならないで」
"巫女"として最低限の責務を全うできなければ、皆は私を期待はずれだと背を向ける。
期待の眼差しが冷たいものに変わるのは、もう見たくない。
でも、一度穢れたこの身体は──── 何で覆い隠せばいいの。
………ねえ、お願い。
私を嫌いにならないで、一人にしないで。
皆を守ってみせるから……私を、必要として。
「っ……、もっとちゃんと、巫女様やるから…っ!!!」
「!!」
「──── っ 、」
強い力で腕を掴まれ、身体を洗い続けていた手が止められた。
同時に鼻腔にひどく安心する香りが差し込む。
張り詰めていた何かが ぷつりと切れて、目尻から、静かに一粒の雫が落ちた。