第3章 交錯する想い
廊下を抜け、電子ロックを解錠し部屋に入る。
扉が閉まった瞬間、張り詰めていた力が抜けて、玄関で膝が折れた。
「……」
暗くて寒い部屋の中。1人蹲っていると、さっきの記憶が何度も鮮明に蘇ってくる。
肌に直接触れられた部分が、未だに熱を持っているような気がして落ち着かない。
「…お風呂」
この身体に残る嫌な感覚を忘れたくて、荷物を玄関に置いたままふらふらと脱衣所へ向かった。
制服を乱雑に脱ぎ捨てて、洗濯籠に入れることもせずに浴室へと足を進める。
(……綺麗にしなきゃ。綺麗に…、)
シャワーを捻ると、まだ温まっていない冬の水が頭から全身を打ちつける。
冷たい。
骨の奥まで沁みるはずなのに、不思議と何も感じない。
怖いくらいに、感覚が鈍い。
「……洗わなきゃ。……気持ち悪いところ、全部」
いつの間にか温度の上がった湯でボディタオルを濡らし、
ボディソープを必要以上に出して、泡立てる。
首、腹、胸。
泡に包まれながら、痛みを感じるほど擦り続けた。
「……ダメ、まだ、残ってる」
お腹を這ったあの硬い手の感触が。
荒い息とともに迫ってくる、欲情した瞳が。
私を愛しているのだと、狂ったように叫ぶあの声が。
全部が、私の中に残ってる。
「……ダメ、…ダメ。こんなんじゃダメ。消えない、なんで、っ」
手を休めることなく各部を洗った。
どれだけ擦ろうと、洗剤で洗い流そうと、私の身体はあの感覚を覚えてしまっている。
逃げられない、と錯覚してしまうほど、深く刷り込まれている。
「ゃ……っ、やだ、……やだっ!!!もっと、もっと綺麗にしなきゃ、ならなきゃ、だって私は───── 」
………だって、私は。
"神様の子 "、なんだから。