第3章 交錯する想い
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広いロビーを走り抜け、エレベーターのボタンを叩くように押した。
運よく一階に停まっていた箱に滑り込み、扉が閉まる直前まで耳を澄ませていたけれど、恵くんの足音は とうとう追ってこなかった。
『上へ、参ります』
無機質で軽快なアナウンスが、やけに耳障りだった。
思わず両手で耳を塞ぎ、その場にしゃがみ込む。
恵くんの、傷ついた表情が頭から離れない。
私がそうさせたんだ。
私のせいで。
「……私の、せい」
声に出すと、現実味を帯びて胸の奥に落ちてくる。
繰り返すたびに、息が詰まりそうになった。
派手な動きをしなくても、繊維さえあれば祓除はできる。だからといって、無闇に呪術を使っていいわけじゃない。
結果、私は呪術師だと勘づかれ、付け狙われ、彼の人生に踏み込んだ上に、歪めてしまった。
────それも全て、"私のせい"。
『33階です』
箱が止まり、手すりを掴んで立ち上がる。
足元がおぼつかず、廊下が長く、部屋が遠く感じた。