第3章 交錯する想い
「お前、どこまで、」
どこまで知っているんだ。
そう問い詰めかけて、言葉を飲み込んだ。
——聞くまでもない。
こいつはに関わる断片を拾い集め、勝手に意味を与え、何度も反芻してきた。
好意という名の執着で噛み砕き、都合のいい形に歪めながら。
「1番彼女の傍にいるくせに、君は彼女を傷つける」
心臓が、嫌な音を立てて跳ねる。
反論の言葉は浮かばなかった。
「僕のさんなのに。僕を救ってくれた、……僕の、神様なのに」
吐き出された言葉は、祈りの形をした執着だった。
その瞬間、の指が俺の服の裾を掴む。無意識だったのだろう。布越しに伝わる微かな震えが、直接俺の怒りへと変わっていく。
「……もういい。黙れ」
「いいや、黙らない!さん、君を傷つける奴は、僕が殺してあげるから!」
狂信的な熱が、室内の空気を歪ませる。
言葉一つ一つに粘ついた執念が絡みつき、肌がひりつく。
コイツは呪詛師なんじゃないか、という疑念が頭をよぎるほど、負の感情が渦を巻き、濃度を増していくのが分かった。
「…簡単に殺すとか、言わないで」
小さな声で、俯いたままが零す。
消え入りそうな声だったが、男はの言葉を聞き漏らすことはしない。
「どうして!?僕は君を愛してる、だから君を傷つける人間が許せないんだ!」
——愛は、呪いだ。
そんな一文を、どこかで聞いた記憶がある。
今なら痛いほど分かる。
この男はを愛したが故に、救われることを望みながら、完全に——狂った。
「どうしてソイツに縋るの?君が好きで、君を守りたいから、僕はこうなったのに。君のせいで──」
その言葉が、最後だった。
「ゔっっ───」
俺は床に座った男の顎を、容赦なく蹴り上げる。
骨に伝わる感触。鈍い音が響き、首が不自然な角度で跳ねる。
男は言葉にならない声を漏らし、そのまま床に崩れ落ちた。