第3章 交錯する想い
「じゃ、のことは頼んだよ〜」
雑音混じりのその軽い一言が、やけに耳に残った。
冗談みたいな口調の奥にある信頼が、今は重く胸に沈む。
携帯をブレザーのポケットにしまい、その場で足を止めた。
濡れたアスファルトに、街灯の光が滲んでいる。
「………行くか」
喉の奥で転がした言葉は、ほとんど独り言だった。
会いたくないわけじゃない。
心配していないわけでもない。
ただ——今は、どんな顔をして会えばいいのか分からない。
自分勝手な理由で、説明もせず距離を取った。
傷つくと分かっていながら、止めなかった。
の隣は、居心地が良すぎた。
任務中でさえ無意識に呼吸を緩めてしまうほど。
背中を預ける感覚が、いつの間にか当たり前になっていた。
それが呪術師として致命的な欠落だと気づいたときには、の中での俺は加護対象になっていた。
守られ続けるなんてごめんだ。
隣で並んで戦えていると思っていたのに。
俺は一人でもやれる——そう思って決意したのが、一昨日の夜。
ただ、俺はやり方が下手だった。
結果としてやったのは、傷つけて遠ざけることだけ。
「……謝んねぇと、」
ポツリと零した言葉は、降り続く雨音にすぐ溶けた。
の学校までは歩くと少し時間がかかる。
俺は迷わずタクシーを拾い、行き先を告げた。