第3章 交錯する想い
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放課後、帰宅路についていた俺の携帯が震えた。
画面に表示された名前を見た瞬間、反射的に舌打ちが漏れる。
嫌な予感しかしない。
「が貧血で倒れたらしくてさ。迎え行ってあげてくんない?」
軽快すぎる声。
通話の向こうでは微かに戦闘音が混じっている。任務の最中だというのは、聞かなくても分かった。
「……なんで俺なんですか。家入さんとか、窓の人で良くないですか」
「え〜?だって恵も心配でしょ?」
即答できなかった。
歩調が、わずかに乱れる。
誰も都合がつかなかったのか。
それとも、最初から俺に振るつもりだったのか。
どちらとも取れる言い方が、余計に腹立たしい。
「……別に、心配じゃないです」
「え、なんで」
この人はいつも、聞かれたくない事を易々と聞いてくる。
そのせいで足元の水溜まりを避けきれず、靴裏が濡れた。
どうでもいいはずの感触が、妙に気になる。
「あ。もしかして昨日が泣いてたの、お前が原因?」
「……」
「へぇ」
核心を突く一言に、呼吸が一瞬止まる。
沈黙が肯定だと理解したのか、五条さんは納得したように息を吐いた。
「ま、時には喧嘩も必要だよ。仲直りは早い方がいいけどね」
拗れると厄介だから、と助言を零す五条さんに、少し意外だと思ってしまった。
のことになると、五条さんは昔から過保護だ。
泣かせた原因が俺だと分かったら、真っ先に怒鳴り込んでくると思っていた。
「家にケーキ残ってるだろうから、帰ったら二人で食べなよ。2人の初喧嘩記念に!」
「アンタ、本当にデリカシーってもんが無いですね」
そう返しながらも、胸の奥がちくりと痛んだ。
これは、初喧嘩なんて言葉で片付けていいものじゃない。