第3章 交錯する想い
彼は私の様子を見て、ほんの少しだけ目を細めた。
一切の揺らぎも逃がさないための視線が、皮膚をなぞるように全身を突き刺してくる。
「でも、外に出て分かった。僕が視えなくなったんじゃなくて、君が消してたんだ。僕の見たくないものたちを」
その言葉は、確認ではなく断定だった。
もう答えを知っている者の声音。
まさか、こんな近くに呪霊を視認できる人間がいるなんて思ってもみなかった。
ましてや それを祓っているのが私だと気づかれ、追い続けられていたなんて。
「あの日から、君と僕は何が違うんだろうって考えてた。ずっと、ずううっと」
引き延ばされた語尾に、異様な執着が滲む。
その"ずっと"は、生活の隙間に食い込み、眠る前も、目覚めた瞬間も離れなかったのだと容易に想像できた。
一日や二日じゃない。
何度も、何度も、同じ疑問を噛み砕き、すり減らしながら考え続けた痕跡。
「……っ」
視線が絡む。
視線だけで縫い止められているみたいに、目を逸らすことすら許されない。
「そうしたらね、君のことを全部知りたくなった」
声が、ほんの少しだけ弾む。
それは期待というより、執念に近い響きだった。
「君の身体、心、君を取り巻く人、環境、秘密全てを」
言葉が重なるたびに、私という輪郭が削られていく。
名前も意思も削ぎ落とされ、ただ解析すべき存在として切り分けられていく感覚。
彼は微笑んだまま言った。
「全部知って、全部理解したら───僕は、君になれる気がするんだ」
その笑みは、満足と高揚がない混ぜになった歪な愉悦に満ちていた。