第3章 交錯する想い
窓から聞こえる雨音の中、給食に手を伸ばす。
一口、また一口と、ゆっくり体に入れていくと、遅れていた空腹感がじわじわと押し寄せてきた。
(…お迎え、誰が来るんだろう)
五条さんはありえない。
そうなると硝子さんか、夜蛾さんか……それとも、窓の人だろうか。
誰でもいい。
ただ、誰であっても余計な手間をかけてしまうことが申し訳なかった。
──ガララッ
扉の開く音がして、私は反射的にスプーンを置く。
「あ……」
「ミョウジさん…!起きてたんだね」
間もなくカーテンが開かれると、そこには不器用な笑みが印象的なクラスの委員長がいた。
「体調は大丈夫?」
「うん、ありがとう」
「……眼鏡、取ってるところ初めて見たよ」
「そうだっけ」
ベッドフレームに背中を預けながら、できるだけ無難な返事を選ぶ。
彼は私の荷物をベッド脇に置くと、なぜかそのまま近くのパイプ椅子に腰を下ろした。
「あの……?」
「僕、ずっとミョウジさんと話してみたかったんだ」
「…はあ」
思わず首がわずかに傾く。
どうして今、このタイミングなのか。
嫌なわけじゃないし、彼がそう思うのも自由だと思う。
けれど——体も、心も、余裕がない今の私に、彼の期待に応える力は残っていなかった。
「……ごめんなさい。今日は少し…」
気分が悪いから。
そう言おうとして体を横にした、その瞬間。
「……っ」
「大丈夫。ちょっとだけ、我慢してね」
覆い被さるように影が落ち、口元に布が押し当てられる。
ひやりとした感触と、鼻をつく微かな匂いに───意識が、遠のいた。