第3章 交錯する想い
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「…お疲れ様、恵くん」
胸の前で小さく片手を上げ、校舎から出てきた恵くんに声をかける。
違和感のないように、できるだけ自然に。
「………やっぱり先に終わってたか」
恵くんと視線は交わらず、その声も淡々としている。
言葉にされなくても、距離を取られていることが嫌なほど分かってしまった。
時間をずらして恵くんの後に校舎を出ればよかった?───ううん、そうしたところで、恵くんはきっと気づく。
「さん…?どうかされましたか?」
恵くんを不快にしない為の思考に囚われて、横を通り過ぎた彼に気づかなかった。
背後から伊地知さんに軽く肩を叩かれ、今この場に恵くんが居ないことに気づく。
帳は上がって、空からは昼に近い光が差し込んでいた。
「あ……えっと、ごめんなさい!ぼうっとしてて!」
「いえ…あの、伏黒くんと何か───」
「車、戻りますね!」
伊地知さんに気を遣わせないようにと全力で笑みを作り、車へと駆ける。
呪霊は祓った。私も恵くんも、怪我をしなかった。
いつも通り任務が終わったのに——胸の奥だけが、重い。
(……助手席に座ってる)
車に乗り込もうと扉を開けて、さらに息が詰まった。
それは恵くんからの明確な拒絶。
「……、」
私は黙って後部座席に回り、静かにドアを閉めた。