第18章 呪術甲子園
「…………やだ」
「ハイハイ。軽く投げるから、ちゃんと捕ってよ〜??そーーーーれっ」
私の拒絶なんて聞こえていないかのような楽しげな掛け声と同時に、ふわっと綺麗な山なりを描いたボールが私の元へ舞い降りてくる。
(……そんなに早くない、…大丈夫、)
そう強く念じて、落ちてくる軌道に合わせて手を伸ばした、次の瞬間。
────すとん
と、ボールは私の手を掠めることもなく、無情にも数十センチ先の地面に落ちる。
土の上で数回、ぽんぽんと間の抜けた音を立てて跳ねた球は、コロコロと転がって、私のスパイクのつま先に当たって止まった。
「………ま、まあそういう時もあるよね!!ほら、今度はナマエの番だよ。ストレートでも変化球でも、バッチコイ!!」
気まずさを誤魔化すように明るく言いながら、五条さんは青いシャツの袖を肘まで捲り上げた。
私は足元に転がった硬球を渋々拾い上げ、数秒ほど睨めっこした後、意を決して五条さんに向けて思い切り腕を振る。
……が、しかし。その球は五条さんの顔の横をすり抜け、遥か彼方、見当違いな場所へ飛んでいき、その影を無くしてしまった。
「ヮ………ワイルドピッチ……」
「ワイルドピッチ?なにそれ、かっこいい」
「ウン、ソダネ」
初めて聞く単語に本心を零せば、五条さんが頭を抱えて蹲ってしまった。
やっぱり、私の球技への対応力は、正真正銘 皆無らしい。
1メートルのキャッチボールすら満足に成立しないのに、試合に出るなんて足手まとい所の騒ぎじゃない。
「ま、東京校はレギュラー足りてるし。ナマエがベンチで良いって言うなら、僕はそれでもいいけど」
「いい!ベンチがいい!」
「ああ、そう……。すんごい嬉しそうね」
待ち望んだ提案に瞳を輝かせて駆け寄れば、五条さんは複雑な表情で私の頭をぽんぽんと撫でる。
「五条先生ー!!こっち全員揃ったーー!」
「ハイハーイ。今行く」
虎杖くんの招集に軽く片手を上げて返事をした五条さんは、私の腕を優しく引いて、みんなが待つマウンドへと歩き始めた。