第21章 起首雷同
ふと新田さんへと視線をやれば、案の定「呪いのことは内密に」と言うように小さく首を振られ、俺は「関係って?」とだけ返すことにした。
「……だから、森下さんが亡くなったことと、橋が………」
「関係ない。俺たちはただ────」
これ以上、一般人である藤沼に深堀りされたら厄介だ。
そう思ってわざと冷たく言葉を遮り、話を上手く丸めて帰そうとした。
しかし、藤沼はさらに声を震わせながら信じがたい言葉を紡ぎ出した。
「私……っ私、行ってるの。中二の時、夜の八十八橋に……ッ、」
藤沼の口から吐き出された事実に、俺の背後にいた釘崎が思わず「げ」と小さく引きつった声を漏らしていた。
「最近、何かお家で変なことないっスか?家族の中で自分だけが感じる違和感とか」
これ以上のパニックを防ぐように、新田さんが明るいトーンを装って藤沼へ軽い調子で質問を投げかける。
「あ……っ、私の家、地方のアンテナショップやってるんですけど、……私が帰る時だけ、お店の自動ドアが開きっぱなしなんです」
開きっぱなしの自動ドア。
────間違いない。
これまでに死を遂げた他の被呪者たちと全く同じ、"前兆"だ。
「お父さんもお母さんも『たまたまだ』って言うから、気にしないようにしてたんだけど、……伏黒くんの話聞いて、八十八橋のこと思い出して……っ、」
藤沼は再び俯き、さらに肩を小さく震わせて涙を堪えるようにそう告げた。
「自動ドアの話はいつ頃からっスか?」
「一週間前から……一日置きくらい、」
相変わらず努めて明るい声音を崩さない新田さんのお陰で少しだけ落ち着きを取り戻したのか、藤沼はゆっくりと顔を上げてそう答えた。
事前の資料を見たところ、初めて異常が出てから呪い殺されるまでは、約二週間の時間がかかっている。
藤沼の感じた異常が一週間前からだとすれば、少なくとも、あと七日は猶予があるだろう。
「あ……。あの、伏黒くん。ちょうどそのくらいのタイミングで、ナマエちゃんからも連絡があって……」
「ナマエ……?」
安堵しかけた脳裏に、全く予期せぬタイミングで飛び出してきた名前。
そのせいで一瞬にして思考が真っ白に染まり、俺の眉間には皺が寄った。