第18章 呪術甲子園
「助けて!!」と伝える代わりに、虎杖くんへ必死の視線を送る。
するとそれに気づいた虎杖くんは、状況を察したように後頭部の髪をガシガシと掻きながら、ゆっくりと恵くんと五条さんの元へ歩み寄った。
「二人とも何してんの?苧環 困ってんじゃん」
「恵が生意気なの!!!!!!!」
「五条先生が駄々こねてるだけだ」
息ぴったりの返事に、思わず吹き出しそうになる。
けれどここは笑っちゃダメだ、と必死に口元を両手で覆って堪えた。
「またそれぇ……??二人とも、それ飽きねえの?」
随分と見慣れている光景なのか、虎杖くんは呆れ果てた顔で、小さなため息と共にそう吐き捨てる。
────この泥沼の戦争を終わらせるタイミングは、今、この瞬間しかない。
そう思った私は、二人の口喧嘩が始まって以来、二度目の声を張り上げた。
「とっ、ところで虎杖くん!何しに来たの!?」
「え?あー…、朝飯誘いに!苧環も来る?」
「い、行く……!行きます!!ほら、二人とも、ご飯食べに行こ!お腹空いた!」
虎杖くんのありがたすぎる乱入のお陰で、今度こそ何とか喧嘩を強制終了させることができそうだ。
神様仏様虎杖様、と心の中で手を合わせたのも束の間。
「アンタ、マジで何しに来たんですか。睡眠の邪魔だったんですけど」
「はぁ〜〜!?この僕が怪我の様子を見に来てあげたっていうのに!!どうしてそんなことが言えるの!!!」
「はなから頼んでねぇよ。つか写真撮ってただろ」
「酷い!!酷くない!?ねえ、ナマエ!!今の聞いた!?僕可哀想だよね!?やさしく慰めて……!」
結局、療養室を出て食堂へ向かうまでの長い廊下の間、私と虎杖くんの背後では、このようなやり取りがずぅぅぅっと繰り広げられていた。
もちろん、私と虎杖くんは今日の個人戦についての話など、何気ない会話をしながら、何とか聞こえていないフリを貫き通した。