第18章 呪術甲子園
「アンタまじでなんなんですか。俺も一応 怪我人なんすけど」
僕の腕を強く掴んで固定した恵は、今にも爆発寸前と言った様子で額に青筋を浮かべていた。
恵の力なんて、僕からすれば簡単に振り払える。
だけど僕は優しい保護者だから、あえてその抵抗に付き合ってあげてるというのに。
「夜這いに来た女の子にエッチなことする怪我人が居てたまるかよ」
「………してねえって言ってんでしょ」
そうは言ったものの、発言までの絶妙な間と、僕から視線を逸らしたその無意識の挙動。
「お前さ、自分が思ってる以上に顔に出やすいの、そろそろ自覚した方がいいよ?」
思ったことをそのまま口に出せば、恵は口をキュッと結んで、居心地の悪そうな仏頂面をさらに歪めた。
さて、ここから更にどう追い詰めて揶揄ってやろうか。
そんな事を考え始めた時、もぞりと毛布の中が動き、僕は自分でも分かるほど、更に口角が上がった。
「ん……、もう、あさ…」
「ナマエ〜〜〜ッ!!!おはよ!愛しの五条さんだよ〜!!!いつものモーニングキッスしよっか!!」
"いつもの"とは名ばかりで、実際には過去に数回しかしたことはないけれど、目の前の"クソガキ"に見せつけてやるために、あえてこれ以上ない大声でアピールした。
……しかし。
「恵くん……、どこ……?」
「ここだ」
「…ふふ、みつけたあ」
久しく聞いていない、ナマエの甘ったるい声音。
それを受けて毛布を軽く持ち上げた恵は、中にいるナマエに自分の姿だけを見せ、薄く微笑んでいる。
(え……。え!?今僕、無視された!?ナマエに!?!?)
逃げようのない残酷な事実に、僕の心臓が氷点下まで一気に冷えていく。
そんな僕の狼狽ぶりを一瞥した恵は、一瞬だけ勝ち誇ったような表情を浮かべ、毛布の中にいるナマエの頭を撫でた。