第2章 わるいこ
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「。これから毎週、恵がやってる呪力コントロールの修行に参加してもらおうと思ってるんだけど、どう?」
恵を家まで送り届け、僕たちの家に戻ってすぐのことだった。
一息つく間もなく投げかけた言葉はあまりにも唐突で、は一瞬だけ視線を彷徨わせ、それから小さく言葉を反芻した。
「呪力コントロール……」
「そ。まぁ、には不必要かもしれないけど」
本音を言えば、技術の問題じゃない。
恵と同じ場所に立ち、同じ時間を過ごすこと——それ自体に意味がある。
「恵が怖い?」
「えっ」
唐突な問いに、の肩が僅かに跳ねる。
今日の一件で距離は縮んだと思っていたが、それは僕の思い上がりだったのだろうか。
「……こわく、ない」
「ほう、なんで?」
少しだけ意地悪く続きを促す。
は考えるように視線を落とし、やがて静かに口を開いた。
「今日一緒に祓ったとき、笑ってくれたんです。助かったって、言ってくれたんです」
その声音は柔らかく、でも曖昧さはなかった。
嬉しかった記憶を、そっと手のひらに乗せるみたいな話し方だ。
「五条さん。私ね、恵くんは"いい人"だと思ったの」
その言葉に、胸の奥がわずかに揺れる。
まっすぐこちらを見つめる瞳には、疑いも計算もない。
「だから、もう怖くないよ」
……そうか。
は、僕らが思っているよりずっと、ちゃんと人と向き合おうとしている。