第2章 わるいこ
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建物の外。
呪霊の気配がすっかり霧散しているのを確認して、思わず口元が緩んだ。
「いや〜!まさかアレを片付けちゃうなんて、さすが僕の弟子たち!」
冗談めかして声を上げながら二人を見る。
恵は相変わらずの仏頂面。
で——その隣に立つは、服のあちこちがほつれ、見るからに満身創痍だ。
これは突っ込まざるを得ない。
「ところで、なんでそんなに服解れてんの?恵に手でも出された?」
「出してない」
そう言った恵の鋭い視線がこちらに突き刺さる。はいはい、冗談ですよ〜。
……というか、“手を出す”って意味、ちゃんと伝わってるあたりがなんとも。
「……恵のエッチ♡」
「ちょっと黙っててくれません?」
ピシャリと制止されるが、その反応が楽しくて、さらに追い打ちをかけようとした——その瞬間。
「術式で……服を使うの」
の、少し震えた声音が、僕の言葉を遮った。
「いつもの巫女装束は、折り方を覚えてるから、術式を使っても元に戻せるんだけど……。これ、わかんなくて」
ごめんなさい、と申し訳なさそうに視線を落とすを見て、ふむ、と一つ頷く。
の術式は触れた物に自分の呪力を流し込み、それを操作するもの。
流し込む呪力量を間違えれば物は壊れるし、操作に慣れてないと戦闘の邪魔になりかねない。
慣れない環境での戦闘でこの結果は、上出来どころか超優秀。
うん、さすが僕が見込んだだけの事はある。
「そっかそっか〜。んじゃ、これ着な!」
そう言って用意しておいた着替えを差し出すと、案の定、ほんのり不信感を含んだ視線が返ってくる。
「……五条さん、なんでこれ持ってきてるの」
「え?に似合うと思って」
それは今日、のために選んだ服だった。
これでもかというほどあしらわれたフリルとリボン。絶対に似合うと確信して、店頭で迷いなく買った一着。
喜んで着てくれると思ってたけど……まあ、趣味じゃなかったのかもしれない。
とはいえ、今はこれしかない。
「ほれほれ、車で着替えてきな〜」
伊地知に目配せすると、慌てて車のドアを開けに走っていく。
その背中を見送りながら、今度は恵へと向き直った。