第15章 成就の証※
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高専に戻り報告書を提出した後、任務でかいた嫌な汗を浴室で洗い流した。
脱衣所を出て端末を確認すると、時刻は21時を過ぎた頃。
濡れた髪をタオルで拭いながら、俺はこの二ヶ月間、幾度となく通い詰めた一室へと足を向けた。
「…………ナマエ」
扉を軽くノックをして名を呼べば、部屋の奥から布擦れの音が聞こえた気がした。
布団に包まっているのか、それとも着替えの最中だったのか。
扉一枚隔てた向こう側の様子なんて、俺には分かりようもない。
……ただ、俺は、今日も会えるか分からないナマエに語りかける。
「今日も、午前中は二年との合同訓練だった。交流会が近いからか、真希さんの扱きがいつもより酷かった」
「さっきまで釘崎と任務で、二級案件だったが怪我なく終わった」
「このまま行けば、交流会が終わる頃には、釘崎も二級に昇級できると思う」
「……お前は今日、何してたんだ」
問いかけても、返事が返ってくることはない。
そうわかっているのに、ここで諦めたら何もかもが終わってしまう気がして、止めることは出来なかった。
どれだけ虚しさに苛まれようが、虎杖だけじゃなく、ナマエまでもが手の届かない場所に行って戻らない可能性が怖かったんだろう。
「………宿儺に心臓を抜かれた身体に、虎杖を呼び戻したのは俺だ」
ふと口から出た言葉は、ナマエを慰めるためのものだったのか。それとも、俺が自分の罪を白状して楽になりたかったからか。
あの時、ナマエは泣きながら虎杖に謝っていたけれど、アイツが責められることなんて一つもない。
宿儺に心臓を治させるほどの実力が無かった俺が、……それ以前に、特級呪霊に立ち向かうことを虎杖に押し付けた俺こそが、元凶なんだ。
「俺が、虎杖を殺した」
念を押すように、自分に言い聞かせるようにそう告げると、扉の奥から声を押し殺したような、すすり泣く音が漏れ聞こえた。