第15章 成就の証※
さっきの謝罪にどんな意味が込められているのかなんて、自分自身が一番よく分かっている。
俺は、ナマエの拒絶出来ない優しさを利用する側に回った。
その罪を、ナマエ自身に赦させるために、俺はあざとく言葉を吐いたのだ。
「……なんで、謝るの」
「……」
「恵くんは、何にも悪くないよ」
……違う、それを言わせたくて縋ったわけじゃない。
そう否定したいのに、梳かれるように湿った髪を撫でられると、どうすればいいか分からなくなった。
「ずっと無視して、ごめんね」
言うべきことが多すぎて返す言葉が見つからず、俺はただ、ナマエの謝罪に首を縦に振った。
「………お部屋、入る?」
するとナマエは俺の髪を撫でる手を止め、甘い毒のような誘い文句を、耳元で囁くように呟いた。
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腕を引かれるがままに部屋の中へと招き入れられると、背後で施錠される音が響く。
そして初秋の夜の暗がりの中、俺たちはまた、互いの存在を確かめ合うように きつく抱き合った。
言葉は交わさなかったが、何となく、ナマエも俺の体温を求めていたような気がして。
その可能性だけで、冷えきった心臓が熱を取り戻していく。
(…………俺だけでいい、)
ナマエを慰めるのも、抱きしめるのも、それ以上のことをするのも。
ナマエの一番近くに居るのは、いつだって俺でありたいと心底願う。
─────たとえ、前世でナマエの魂が宿儺に惹かれていたとしても。
今、ここに生きているナマエは俺のものだ。
そうコイツ自身が口にしたのだから。
「…………ナマエ」
「…?」
抱きしめる腕の力を緩め、名前を呼べば、ナマエの顔がゆっくりと持ち上がる。
窓から差し込む月光を反射して、赤い瞳が揺れる。
世界で一番弱いその瞳に吸い寄せられるように──────俺は、ナマエの額に自分のそれを静かに重ね合わせた。