第14章 『いいこ』の作り方
ナマエを壊していいのは、この世で僕だけだ。
僕以外の人間の安っぽい言葉で壊されて、傷ついて。
挙句の果てに、あんな連中の影に怯えて塞ぎ込むなんて。
「ナマエは────"悪い子"だね」
この僕に、僕以外の誰かが付けた傷を舐めさせようとするところも。
僕が嫌っている連中だと知っておきながら、それでも"縛り"を結べば良かったなんて思考に陥るその脳みそも。
「え……?」
荒くなっていたナマエの呼吸はピタリと止み、全身の震えすらも止まっている。
ナマエはいつだって、持てる手段全てを使って感情を伝えようとする。
それにこんな時でも愛おしさを感じてしまうのは、きっと僕が、ナマエに狂わされているせいだ。
「あんなジジイ共に縛られたら、ナニされるか分かったもんじゃないのにさ」
独り言のように呟けば、毛布の隙間から「な、に……?」と掠れた問いが返ってくる。
本当はどこかで気づいてるくせに、無意識で純情を振りまくナマエが愛おしくて────少し、疎ましい。
「逆らえないお前にヤラシイ要求して………恵にされてるみたいに、めちゃくちゃにされちゃうかもよ?」
「っ……!!」
ああ、今はきっと、『なんで知ってるの』って思ってる。
ナマエの中に澱む術式の副産物。
それがキャパシティを超えないよう見張って、度々 恵をけしかけているのがこの僕だなんて──お前は夢にも思っていないんだろうな。
(ん〜…………もう一押し、かな)
あともう少し。
僕以外に壊されてしまったなら、僕がそれ以上に壊して、その穢れた存在を霞ませてやる。
それがナマエにとっても、僕にとっても、一番幸せな選択だから。
「それに、上の指示に従うってことはさぁ────僕を殺せって言われたら、殺しに来るってことだよね?」
「っ……!!!そんなことしない……!!絶対、しないから!!」
バサッと布が激しく擦れる音とともに、腕の中の毛布が弾け、ベッドの上にふわりと落ちる。
中から姿を現したナマエは、先程よりもずっと傷ついた赤い瞳で、僕を真っ直ぐ見つめていた。