第14章 『いいこ』の作り方
「……私の術式に関する"文献"を持ってて………私が総監部の指示に従うなら、それを貸してやるって、条件を出されて──……」
「へぇ」
「っ、」
思わず漏れ出た低い相槌に、ナマエの身体がビクンと跳ね、小さく丸まった背中が また縮こまる。
「ああ、ごめん。それで?どうしたの?」
「…………こ、断った、よ」
ナマエを手駒にして、僕への嫌がらせの一旦にしようって魂胆だったんだろうけど───見事にナマエにフラれたわけだ。
うん、偉い。総監部の性悪を見抜くなんて、さすが僕の娘。
そう手放しで褒め称えてやろうとした、その時だった。
「───でも、……だから、虎杖くんを助けられなかった」
ふと零れたナマエの切実な後悔。
その一言のせいで、アイマスクの奥に潜む自分の目が、冷酷に据わっていくのを感じた。
「私が反転術式を使えたら、無くなった心臓だって戻して見せるのに……!!恵くんの前で、虎杖くんを死なせずに済んだのに……!!」
フラッシュバックしたように、ナマエはまた取り乱し始める。
小さく震える身体を壊れ物を扱うように、けれど強く抱きしめながら、僕は理解してしまった。
────ナマエは、壊されてしまった。
それも、僕が酷く嫌悪する、あの連中に。
「私の間違った選択のせいで、虎杖くんを殺しちゃった……っ、恵くんを、悲しませた……!!」
……違う。"縛り"を結んだところで、アイツらはナマエを使って悠仁を殺す計画を立てただろう。
縛りを結んでも、結ばなくても。どちらに転んでも、ナマエが壊れる未来は変わらなかったわけだ。
(あー……やっぱり全員、殺してやろうかな)
脳裏に老いぼれ連中の首を一人ずつ撥ね飛ばす光景が浮かぶ。
本当は今すぐにでも乗り込んで、一人ずつじっくり、ゆっくり、丁寧に葬ってやりたいところだけど。
────今は、ボロボロになったナマエを僕の手のひらの中に取り戻すのが先だ。