第14章 『いいこ』の作り方
「……ねぇ、ナマエ。昇級の話以外に、何か言われた?」
ナマエを抱きしめる腕に力を込めながら問いかけると、心当たりがあったのか、ナマエはピクリと反応を示した。
「言って」
ほんの少しだけ声音を落とし逃げ場を塞ぐように促すと、ナマエは震える身体をさらに丸め、途切れ途切れに言葉を紡ぎ出した。
「……私の術式は、反転術式と似た運用ができるって、言われた……」
ナマエの術式の詳細は、信頼の置ける恵と硝子、そして伊地知にしか開示していないはずだ。
それなのに何故、上の連中はナマエの術式の"可能性"を知っているというのか。
「あ……っ、わ、私はぜったい、誰にもバレないように祓ってたの…!
身体に術式も使ってないし、五条さんがくれた赤いリボン以外、使ってなかった……!!」
僕の纏う空気が重くなったのを悟ったのか、ナマエが取り乱したように弁明の言葉を重ねる。
元よりそんな心配は微塵もしていない。
ナマエが僕との約束を破ることなんて、僕の思考には組み込まれていないからだ。
「大丈夫だから。信じてる、疑ってなんかないよ」
浅くなったナマエの呼吸を整えるように、毛布越しにゆっくりと背中を撫でる。
反転術式。アイツらはその可能性を示唆して、僕の大切な存在に何をするつもりだったのか。
「他に、何か言われた?」
「っ……」
「ナマエ、教えてよ。お前が言われたこと全部、僕に教えて」
クソジジイ共が何を吹き込み、この子がそれをどう受け止めて記憶しているのか。
僕は、そのすべてを、一言たりとも聞き逃すつもりはない。