第13章 呪胎戴天
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総監部の甘いお誘いを断った後、私は曇天の空の下、弾む足取りで教室へ戻った。
「ただい──…ま?」
でも、勢いよく開けた扉の先には誰もいなかった。
…三人揃って授業をサボっているならまだしも、教壇に先生の影すらない。
それに、もし私だけを置いてどこかへ移動するなら、恵くんが一言連絡をくれるはずなのに。
(何かあったの……?)
妙な胸騒ぎがして恵くんに電話をかけたけれど、端末の向こうから恵くんの声が聞こえることはなかった。
(……いつもなら直ぐに出てくれるのに、どうして)
考えられる可能性は二つ。
恵くんの携帯の充電が切れているか、……もしくは、帳の中にいる。
恵くんのことだから、前者はありえない。だとすれば、消去法で答えは後者だ。
「っ…!!」
堪らず教室を飛び出して、校舎の階段を駆け降りた。
恵くんはいつも、私に黙って任務に行く。
たぶん、それを言うことで私の負担になると思ってるから。
(……でも、何も知らされない方が、私はもっと不安になるんだよ)
踏み込まれるのは嫌だと分かってる。
それでも、今は緊急事態だと思ったから。
だから私は走りながら携帯を操作して、ひとりの"信頼できる補助監督さん"へと電話をかけた。
「……っ、伊地知さん!!聞きたいことが…!」
『苧環さん?!都外の任務に向かわれたのでは!?』
「え…?いや、私はずっと高専に、」
任務の話なんて、今日は一件も受けていない。
伊地知さんのような人が、共有された情報を間違えるはずもない。
だとすれば、答えは一つ。
(……誰かが、嘘をついた?)
何のために、と思考が奪われそうになって、頭を強く振った。
今はそんなことよりも、恵くんたちの安否が最優先だ。
「あのっ、皆は今どこにいますか!?」
必死の問いかけに返ってきた言葉に、心臓が跳ねて足が止まった。