第13章 呪胎戴天
「あれは千年前に俺が殺し損ねた女だ。どうやら健気なことに、俺に殺されるために魂を廻らせ続けているらしい」
それはつまり、なんだ。
宿儺が言っている事が事実ならば、ナマエの魂は千年前のもので、転生を繰り返しているということか。
「そんなことが有り得るわけ───…」
「"縛り"。そう言えばわかるか?」
縛り。その単語に言葉を奪われた。
宿儺とナマエの魂は、千年前に縛りを交わしていたのか。
だとすれば、その縛りは宿儺になんのメリットがある?
「あれは俺に殺されることを渇望し、己は俺のものだと豪語した。───にも関わらず、俺の居ぬ間に勝手に命を捨ておった」
「つまらん大蛇に喰われおって」と忌々しげに零す宿儺は、さっきよりも随分と機嫌を良くしているように見える。
それを見て理解した。
宿儺は千年前、ナマエの魂を宿した女に無意識のうちに惹かれていたのだと。
「この俺を不快にさせた罰だ。今世で入れ込んでいるお前を殺し、絶望したヤツを犯した後、この手で殺す」
呪いの王も元は人間。
千年前の女の願いを、千年越しに叶えようとするその健気な執着に、皮肉にも人の断片を感じてしまった。
────だが、そんな未来はありえない。
「……お前がナマエに行き着く前に、虎杖は戻ってくる。その結果自分が死んでもな」
「買い被りすぎだな。コイツは他の人間より多少頑丈で、鈍いだけだ」
虎杖に自死する度胸はない、と断言する宿儺を前に、俺は手型を組んだ。
特級呪霊に切り落とされた腕は治ってる。
心臓を欠いた状況では俺に勝てないと思わせ治癒させれば、虎杖は生きて戻ってこられる。
(……できるか?特級の前ですら、動けなかった俺に)
いや、できるかじゃない。やるんだよ。
「せっかく外に出たんだ。───広く使おう」
俺の近接を難なく交わし、大蛇(オロチ)の拘束と鵺の攻撃を受けてもなお、宿儺は無傷だった。
大蛇は破壊され、気づいた時には背後を奪われていて。
服を掴み上げられた後、俺の身体は遥か遠くへと投げ飛ばされた。