第13章 呪胎戴天
満身創痍の釘崎を連れ、なんとか建物外へと脱出した後。
結界の中にいる虎杖に届くかは分からなかったが、玉犬に遠吠えを上げさせ、合図を送る。
そしてその後、釘崎を抱きかかえた伊地知さんと共に車へと戻った。
「避難区域十キロまで広げてください」
車外からそう告げると、運転席に座る伊地知さんはゆっくりと頷いた。
「伏黒くんは?」
「残ります。……もしもの時、俺にはアイツを始末する責任があるので」
俺のせいで受肉した。俺の私情で生かした。
だから虎杖が宿儺に呑まれた時────その責任は、俺がとる必要がある。
「釘崎さんを病院へ送り届けたら、私もなるべく早く戻ります」
「いや、伊地知さんはいてもあまり意味ないので。戻ってくる時は一級以上の術師と一緒にお願いしまします。……居ないと思うけど」
「…………はい」
正論に打ちひしがれながらも、伊地知さんは首を縦に振り、そのまま車を発進させた。
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二人を送り出してから暫くして。
少年院から立ち上っていた禍々しい呪気が霧散し、生得領域が閉じたことを肌で感じた。
後は虎杖が戻れば。……そう考えた時だった。
「ヤツなら戻らんぞ」
なんの前触れもなく背後から突き刺さった殺気に、肺の空気が一気に奪われ、酸素が頭に回らなくなる。
「そう脅えるな。今は機嫌がいい、少し話そう」
そう声を弾ませながら俺の前に悠然と姿を現したのは、虎杖の肉体を完全に支配した宿儺だった。
宿儺は虎杖が主導権を取り戻しあぐねている現状を嘲笑い、虎杖自身を人質にするため、自らの胸に手を突き立て、中からドクドクと鼓動する心臓を引きずり出す。
さらにダメ押しに、と。先程の特級呪霊が取り込んでいた"指"を無造作に口へ放り込み、呑み下した。
「さてと。晴れて自由の身だ、もう脅えていいいぞ」
「っ…、」
「お前を殺す。そして、お前のものだと勘違いしているあの馬鹿な女───あれは好きに犯した後、殺してやる」
「は……?」
宿儺は、またナマエの存在を仄めかし、歪に口角を釣り上げた。