第13章 呪胎戴天
「ここに、貴様の術式に関しての文献がある」
「……!!」
灯りが灯る障子のひとつ。
そこに浮かび上がったのは、一冊の分厚い本の影だった。
「一級術師として、我々総監部の指示に忠実に従うのであれば────貸してやらんこともない」
「っ、」
五条さんはよく、上層部の人たちが嫌いだと愚痴を吐いていた。
私は会ったことが無かったから「そうなんだ」と受け流していたけれど、いま、わかった。
「……そういうことなら、結構です」
この人たちは、言葉巧みに私を縛って、都合のいい"操り人形"に仕立て上げようとしている。
私の故郷を壊滅させたあの呪詛師と、やろうとしていることは変わらない。
「私を縛っていいのは、この世に二人だけなので」
薄く笑みを浮かべながらそう告げると、場の空気が凍ったように静まり返る。
五条さんと恵くん。二人以外に縛られる人生なんて、私はこれっぽっちも楽しめない。
「昇級のお話も保留でお願いします。……私はまだ、あそこには立てません」
七海さんの背中は大きかった。
傍にいるだけで、五条さんと同じくらい安心できた。
でも、私はまだ、それを与える側にはなれないから。
「それでは、失礼します!」
振り切った声音で頭を下げ、今にも駆け出しそうになる足を抑えて、重苦しい部屋を後にした。
(……使い方次第で、もっとちゃんと、人を助けられる)
自分の可能性が広がったことに、とてつもない幸福感を感じた。
怖いものを祓って、痛いのを治して。
それができるようになれば、私はもっとたくさんの人を、もっと、もっとちゃんと救えるようになる。
(文献なんてなくても、自分で考えればいい)
私の選択は間違ってない。そう自分に言い聞かせて、教室へ戻る道を歩いた。
建物を出ると、疎らに散っていた雲が集まり、曇天になっている。
今にも雨が降りだしそうな空を見て、私は校舎へと駆け出した。