第13章 呪胎戴天
逃げ回るナマエを釘崎がようやく捕獲し、背後から羽交い締めにしていた、その時。
「失礼します。苧環さんはいらっしゃいますか?」
短いノック音に続いて教室の扉が開き、一人の補助監督らしき男が入ってきた。
「あ……私、です」
釘崎の腕の中で小さく挙手をしたナマエは、戸惑いながらもゆっくり立ち上がり、男の元へ歩み寄った。
「総監部よりお呼び出しがかかっています。至急、会議室へ来ていただけますか」
「え……?あの、一応、授業中なんですが…」
「一級昇級の件と伺っていますので、早急にお願いします」
一級昇級。
そういえば、いつか五条さんがそんな話をしていたのを覚えてる。
ナマエ本人からも、何度か一級術師の任務に同行したとは聞いていたが、それにしてもこの昇級スピードは異常だ。
「……今すぐじゃないと、ダメですか」
「はい。総監部の方々も、時間を縫ってご出席されていますので」
「…………わかりました」
有無を言わせぬ圧に押し負けたのか、ナマエは少しだけ唇を尖らせて了承し、男の後について教室を出ていった。
「「「…………」」」
喧騒の中心にいた人物が居なくなれば、教室内には自然と沈黙が訪れる。
しかし、それを真っ先に切り開いたのは釘崎だった。
「……ちょっと伏黒。聞いてないんだけど」
「……何がだよ」
「あの子が一級って事よ」
聞いてなかったのか。
一度ナマエと共闘した釘崎なら、等級が高いことくらいは気づくと思っていたんだが。
「まだ準一級だ」
「いや、あの感じ。どう考えても昇級するでしょ」
「……総監部に推薦されたって五条先生 言ってたからな。気に入られてんだろ」
吐き捨てるように告げると、釘崎は「それっていいことなの?」と、鋭い疑問を俺にぶつける。
良いか悪いかで言えば、たぶん悪い方。
それも、釘崎も知らないナマエの境遇を考えれば尚更。
深刻な表情で言葉を交わす俺たちの横で、虎杖だけが「一級? 総監部?」と、状況が飲み込めない様子で顔を顰めていた。