第13章 呪胎戴天
長い廊下の突き当たり。
そこに一台だけぽつんと置かれた自販機の前で、ナマエは真剣に唸っていた。
「どれにしようかな~~……」
「…また買うのか?」
「買う!せっかく来たんだもん」
さっき教室で麦茶を開けたばかりだというのに、また新しい何かを買うつもりらしい。
強引に連れ出した手前、少しだけ申し訳なさを感じつつ、俺はポケットから財布を取り出した。
「どれがいい」
「え?」
「買ってやる。どれにするか決まったら言え」
「え……いいの?」
「ああ」
謙虚に首を傾げたナマエだったが、俺が頷けば満面の笑みを浮かべ、「じゃあコレ」と、紙パックのフルーツオレを指さした。
「ん、」
「ふふ、ありがとう」
ガタン、と音を立てて落ちたそれを取り手渡すと、ナマエは嬉しそうに受け取り、早速ストローを刺した。
ちゅ、と中の液体が吸い上げられる音を聞いてから、俺はナマエの髪を緩く撫で、教室に戻ろうと踵を返す。
「んぇ…恵くん、買わないの?!」
「……ああ、必要なくなった」
「え…そうなの?」
そもそも最初から喉が渇いていたわけではなく、ただナマエを連れ出したかっただけだ。
しかし、そんな俺の内情を知る由もないないナマエは、納得しきれない表情で手元の紙パックに視線を落とし、不満げに唇を尖らせた。
「私だけ、申し訳ないよ」
言葉通り申し訳なさそうに、ナマエは顔を顰めてみせる。
申し訳なく思うべきは俺の方だというのに、お人好しにも程がある。
しかし、このままでは何を言っても納得しないだろう。そう考えた俺は、ひとつの提案をした。
「……じゃあそれ、一口くれ」
「え?……でもこれ、甘いよ?苦手でしょ?」
「少しくらい飲める。……ダメか?」
少しだけ声を落として詰め寄れば、ナマエは「……ダメじゃない」と固く頷き、ストローの先を俺の口元へと差し出した。