第12章 鉄骨娘と元神様
軽いストレッチだけをして、私は木陰から飛び出した。
白く描かれた円に沿って走り、無言で釘崎さんの隣に並ぶと、彼女は綺麗に私を二度見した。
「……どういうつもりよ」
仲良くなりたいからペナルティを一緒に受けたい、なんて、そんな本心を言えばまた怒られるだろう。
だから私はただ、釘崎さんの隣で足を動かし続けた。
「………聞きたかったんだけど」
「…?」
先に沈黙を破ったのは、前を向いたままの釘崎さんだった。
「アンタ、他人のために生きて楽しい?」
「………私が、誰かのために生きてるように見えるの…?」
「実際そうでしょ。他人を庇って死のうとするくらいなんだから」
別に死のうとなんてしてないけど、釘崎さんの目には変わらずそう見えるらしい。
でも、私は誰かのために自分の命を懸けてるわけじゃない。
「……私は、自分のために人を助けてるつもりだったよ」
ぽつりと呟いた本心に、釘崎さんの視線がこちらを向くのが分かった。
「誰かに認めてほしくて、必要とされたくて。誰かの役に立ってないと、自分がここにいていい理由が見つからなくて……不安で、仕方ないから」
「………ふぅん」
醜いと思われただろうか。
私はきっと、ずっと、自分のためだけに呪術師をしている。
誰かの命を救った時、誰かの助けになれた時、私は何よりも先に、自分に価値を見出して安心していたから。
「私、釘崎さんに"自己満足"って言われた時、言い返せなかったでしょ」
「…ええ」
「……たぶん、その通りなんだと思う」
私は、この強すぎる承認欲求の末に、快楽を見出している。
だから、釘崎さんに言われた言葉がずっと胸に沈んだまま、頭から離れなかった。