第12章 鉄骨娘と元神様
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昼食を終え、恵くんや虎杖くんと談笑しながら、午後の訓練のためにグラウンドへと向かう。
春も終盤に差し掛かり、廊下に差し込む陽光は日に日にその熱を強めていた。
「俺もそろそろ、こっちで使うジャージ買いに行こっかな。……あ、前の高校のでいっか」
「別の学校の刺繍入りでいいなら、良いんじゃねぇか」
「うわぁ〜……別にいいけど、なんか嫌だな」
「どっちだよ」
隣で繰り広げられる、なんてことない男子高校生らしいやり取り。それを背後で見守りながら、私はそっと笑みを零した。
同年代の男の子と、年相応に無邪気な会話を交わす恵くんの姿は珍しい。
中学の頃の彼は周囲から酷く恐れられているように見えたし、そもそも自分から他人を寄せ付けないような、刺々しい気配を常に纏っていたから。
(……虎杖くんが来てくれて、良かった)
彼がここに来た経緯がどれほど残酷で、理不尽なものだったとしても。
今、恵くんの隣に虎杖くんがいることを、私はどうしようもなく幸福だと思ってしまった。
私には引き出せない、友人としての恵くんの新しい一面を見守れるからだと思う。
「あ。や〜〜っと来た!! 」
グラウンドへ続く扉を開け、眩い陽光を全身に浴びた瞬間。
近くの木陰で、長い腕をひらひらと振る五条さんに呼び止められた。
「見てほら、あれが遅刻のペナルティ。ナマエと恵はともかく、悠仁は気をつけなね〜」
「名指し!?ひでぇ!!」
五条さんがニヤニヤしながら指差した先では、苛立ちを隠そうともしない釘崎さんが猛烈な勢いで地面を蹴っていた。
「……………」
ペナルティとして課せられたものなら、私がそれを代わってあげることも、止めることもできない。
でも───私は、釘崎さんと仲良くなりたいから。
「五条さん。あれ、あと何周?」
「ん〜?二周かな」
「……私も、走ってきていい?」
そう首を傾げて問いかけると、五条さんは「お前がやりたいようにやりな」と背中を押してくれた。