第12章 鉄骨娘と元神様
「……?恵くん、」
「………なんだ」
黙り込んだ俺を見て、ナマエは食べる手を止めて小首を傾げた。
その、すべてを見透かそうとするような赤い瞳に真っ直ぐ射抜かれ、背筋が微かに跳ねる。
「ぼーっとしてる、珍しいね?」
「んなことねぇだろ」
普段は鈍いくせに、こういう時だけ持ち前の勘の良さを発揮してくる。
自分の心の醜い部分を覗かれたような気がして、俺は逃げるように視線を逸らした。
「……早く食え、冷めんぞ」
誤魔化すように吐き出した息が食堂の静かな空気に溶けた、その時。
「ねえ、恵くん」
ふと名前を呼ばれて顔を上げると、頬杖をついたナマエの赤い瞳と視線がぶつかった。
「一番、大好きだよ」
「……は、っ」
不意打ちすぎる告白に、思考が真っ白に染まる。
唖然として口を開けたその隙を逃さず、ナマエはスプーンごとオムライスを俺の口に押し込み、悪戯っぽくくすくすと笑った。
「ふふ、元気になった?」
「……」
口の中に広がるケチャップの味を噛み締めながら小さく頷く。
するとナマエは満足げに目を細め、子供をあやすような手つきで、俺の髪を ゆっくりと撫でた。
こいつはどうしていつも、俺が一番欲しがっている言葉を、この完璧なタイミングで投げられるのか。
「………俺も、」
たまには、俺の方からも真っ直ぐな好意を返してやってもいいんじゃないか。
そう決意し、重い口を開きかけたのに。
「おっ、いたいた。伏黒、苧環〜!」
こういう時に限って、いつも、邪魔が入る。
「…………」
「えっ、伏黒怒ってる……?」
「別に、怒ってねえ」
「嘘じゃん!!」
俺の殺気に近い視線を浴びて、虎杖が文字通り飛び上がって後退した。
それを見たナマエが、またくすりと笑みを零す。
「虎杖くん。ランチ、何食べたの?」
「ビフテキ!!」
「ふふ、美味しかった?」
「超美味かった!!やっぱ肉はいいよ、魚も好きだけど!」
目の前で談笑を始める二人を眺めながら、俺は沸き上がる溜飲を下げようと必死に尽力した。
だが、俺だけに向けられていたはずの笑顔が、今は別の奴に向けられている。
その事実に、胃のあたりが焼けるような独占欲が、また、じりじりと胸を焼いた。