第12章 鉄骨娘と元神様
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ナマエと釘崎が建物の中に入り、一時間が過ぎようとしていた頃。
「うん、終わったね」
不意にベンチから腰を上げた五条さんは、確信を持った足取りで入口へと歩き出す。
その様子を見て、俺と虎杖も立ち上がり、その後を追った。
「おっ、出てきた!」
暗いエントランスから重なるような人影が見えた瞬間、虎杖が声を弾ませて大きく手を振る。
しかしその影が陽光の下へ踏み出したとき、俺は重い溜息を吐き出すことになった。
「アンタ、ホンッッット馬鹿!!!ありえないんだけど!!」
「くっ、釘崎さんが、鈍感だから……!!」
「はあ?!私のせいにしないでくれる?!」
「私が居なかったら死んでたかもしれないんだよ、もっと褒めてくれても良いでしょ…!」
頭部から血を流すナマエは、釘崎の腕の中にいた。
呪霊の攻撃から釘崎を庇って負った傷なのは、会話の内容からも明白。
ただ、今までなら「すみません」と低頭に謝っていたはずの場面で、ナマエは釘崎の胸元に顔を埋めたまま、子供のように声を荒らげている。
「わ〜、大喧嘩。最っ高だね♡」
「何で嬉しそうなんですか」
五条さんは口角を歪に吊り上げ、満足げに二人を眺めていた。
自分の撒いた、釘崎という"種"が見事に実ったことを楽しんでいるようにしか見えない。
「あれ、ほっといていいの?俺止めようか?」
「いや、まだ止めなくていいよ」
今にも殴り合いが始まりそうなほどの口喧嘩に、堪らずと言った様子で虎杖が声を上げたが、五条さんは間髪入れずに制止した。
「だいたい、"私の方が強い"とか言っときながら、祓った数は私と同じじゃない!」
「え……?釘崎さんは三体だけでしょ?私の方が六体多いよ」
「最初の六体を足してイーブンでしょうが!!」
「それ、私のサポートで祓ったやつでしょ?ノーカウントだよ」
「は〜〜〜!?!?ムカつく!!!!」
いつの間にそんな子供じみた勝負をしていたのか。
激昂する釘崎に対し、ナマエは不満げに唇を尖らせ、冷静かつ生意気に言葉を返していた。