第12章 鉄骨娘と元神様
「私の命は私のもの。アンタの自己満足のために使わせる気はないわ」
「自己……満足、」
「大体ね、庇うような動きされると、"あなたは弱いです"って言われてるみたいで気分悪いのよ」
次々と浴びせられる言葉が、鋭利な棘になって心に突き刺さる。
呪術師は、ただひたすらに、弱者を救うもの。
私にとってその対象は非術師だけじゃなくて、呪術師にだって当てはまる。
「………だって、私の方が強いもん」
ふと零れ落ちたこの言葉こそが、きっと、ずっと内に秘めてきた、私の傲慢な本心なのだろう。
気分が悪い、なんて誰にも言われたことがなかった。
私の献身を、みんなは喜んで受け入れてくれた。
『巫女様のお陰で、息子が助かりました』
『巫女様のお力があれば、村は安泰です』
『───ナマエは偉いねぇ。みんなの為に、もっと強くなろうね』
誰かを助けたら感謝される。誰かが褒めてくれる。
それが私の世界の常識。
今も、強くなれば五条さんが喜んでくれると信じてるから、私は準一級にまで上がってこられた。
「……釘崎さんより私の方が強いんだから、私が庇うのは当然でしょ」
「はあ?」
囁くように小さな声で事実を呟けば、釘崎さんは腹の底から出た声で感嘆詞を吐いた。
本当のことだから、撤回なんてしない。
私は準一級で、彼女は三級。呪術師としての格も、積み上げた数字も、埋めようのない雲泥の差があるから。
「まさか、そこまで舐められてるとはね」
舐めているわけではない。
私はただ、釘崎さんが傷ついてほしくないと思ってるだけ。
「いいわ、今から勝負しましょう」
「……勝負?」
「そう。固まって動いて、相手より多く呪霊を祓う。単純でしょ」
逃げ場を塞ぐような提案に、私は呪力を練りながら釘崎さんの瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
私が彼女より優れていることを力で証明して、逃れようのない事実でねじ伏せる。
そうすればきっと、釘崎さんも私の気持ちを受け入れてくれるはずだ。
「………全部祓うよ、私が」
「やってみなさいよ。やれるならね」
そう言って私を鼻で笑った釘崎さんは、埃の舞う薄暗く長い廊下を、迷いのない足取りで歩き始めた。