第12章 鉄骨娘と元神様
「言いたいことがあるなら言いなさい。じゃなきゃ伝わんないわよ」
俯く私を見かねたのか、釘崎さんに強く両肩を掴まれ、私は小さく唇を噛み締めた。
そうだ、言わなきゃ伝わらない。
言葉にすれば、きっと釘崎さんは分かってくれる。
そう信じて、私は喉の奥に固まっていた本心を絞り出した。
「……私は、後衛で釘崎さんを見守りたい、です。釘崎さんに何かあった時、一番に動いて、……サポート、したいから」
勇気を振り絞って視線を上げ、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめて告げる。
けれど、返ってきたのは理解ではなく、凍りついたような冷ややかな眼差しだった。
「今ので確信した」
「……、」
釘崎さんはそれだけ言うと、私の肩から手を離して姿勢を正す。
直後、私の背後から音もなく迫っていた呪霊を手際よく釘で貫き、一瞬で祓い去った。
「アンタ、自分の命を徹底的に軽く見てるでしょ」
「っ、見てな────」
「そういう奴が、私は一番信用できないのよ」
吐き捨てられた言葉は、今まで掛けられてきたどんな罵倒よりも鋭く私の胸を刺した。
私を見下ろす釘崎さんの瞳には、ただ不快なものを見るような色が混じっている。
「自分の命を雑に扱う奴が、他人を守れるわけないでしょ」
「……でも、呪術師は、命を懸けて当たり前でしょ」
震える声で反論した。
死ぬ気でやるのが、呪術師として在るべき姿のはずだ。
けれど、釘崎さんはさらに声音を低くし、氷のような冷たさで私の反論を一蹴した。
「私は死ぬ前提で動くなって言ってんの。懸けて当然の命なんて、あってたまるかっての」
鋭い視線に射抜かれて、首元に刃物が添えられたような錯覚に陥る。
それでも、ここで引き下がって誤解されたまま終わるのは嫌で、回らない頭で必死に言葉を紡いだ。
「私は……っ、誰かが死ぬのを見るくらいなら、自分が傷ついた方がマシだって思ってるだけ…!!死ぬ前提で動いてなんか───」
「じゃあ、その"誰かの代わりに負った傷"でアンタが死なない保証はどこにあんのよ」
「っ、」
ぐうの音も出ない正論に喉を塞がれる。
自分の存在を丸ごと否定されたような衝撃に指先が微かに震え、この場の冷えた空気が重くのしかかった。