第12章 鉄骨娘と元神様
虎杖くんとは、この一週間でそれなりに打ち解けられた……と思う。
といっても、虎杖くんの持ち前の明るさとコミュニケーション能力に救われているだけなのだけれど。
ただ、釘崎さんとはなかなか話すきっかけが掴めない。
……いや、違う。
私が、私の方が、無意識に釘崎さんと距離を置こうとしてしまっていて、それが釘崎さんにバレているのだ。
(………仲良くしたいって、思ってるのに)
初めて出会った時、彼女が私を心配して助言をくれたのは分かっていた。
けれど、あの時の語気の強さがどうしても耳に残っていて、何をどう話しかけるのが正解なのか、分からないままでいる。
「さっ、ホームルーム始めるよ〜ん」
五条さんの軽快な声を聞きながら、
私の頭の中では、釘崎さんと私が仲良く手を繋いでショッピングを楽しむ風景が流れた。
可愛い服を選んで、笑い合って。帰りにオシャレなカフェで少し背伸びしたお茶をする。
……けれど、そんな温かな光景は一瞬で霧散し、冷たい現実へと引き戻される。
きっとそれが、私には到底叶えることのできない、夢物語に思えたから。
「午前はこのまま、四人で任務に出かけるよ〜!ちゃちゃっと2、3件捌いちゃってよ」
「アンタの任務じゃないだろうな」
「え?何?なんか言った?」
「はぁ……」
五条さんはわざとらしく耳をかっぽじって、恵くんの正論を軽やかにスルーした。
教壇で飄々と笑うその姿は相変わらず掴みどころがないけれど、その普段通りの空気に少しだけ呼吸が楽になる。
隣の恵くんは呆れたように深く溜息を吐きながら外出の準備を進め始め、それに倣うように、私も机の横にかけていたスクールバッグに荷物を詰め込んだ。
「センセー!!!任務終わったら、先生の奢りで飯?!」
「え〜……ん〜……それはまあ、出来次第かな」
「ッし!!俺、今日こそビフテキ食いに行きてえ!」
「ビフテキ! ビフテキ!」とリズム良く拳を握る虎杖くんと、それを見てやれやれと肩をすくめる恵くん。
釘崎さんはまだ不機嫌そうにツンと口を尖らせて、窓の外を眺めていた。