第2章 わるいこ
その後、口を尖らせながら不服そうに差し出された服へ袖を通し、私は部屋を後にした。
サイズが少し大きいのか、袖口が指先を隠して落ち着かない。
玄関口を抜けてエレベーターなるものへ向かう途中、白く磨かれた床がどこまでも続く長い廊下を歩きながら、私は先ほどまで横になっていた場所について尋ねた。
どうやら、あそこは五条さんのお家らしい。
今までは呪術専門の学校にある医務室でお世話になっていたけれど、昨日からは五条さんの家で保護されることが決まったのだという
。
医務室の消毒の匂いとは違う、どこか生活の気配が残る空気を思い出し、胸の奥が少しだけざわついた。
『1階です』
軽快な電子音とアナウンスと共にエレベーターの扉が開く。
足を踏み出した瞬間、視界いっぱいに広がったのは、入った時とはまるで違う景色だった。
「わ……!なんで?!」
「なんで……?何が……?」
「入ったところと出たところが別の場所!魔法?」
「ヤダ、何この子可愛い……」
驚きのまま声を上げると、五条さんは楽しそうに笑い、わしゃわしゃと私の頭を掻き撫でてくる。
くすぐったさに身をすくめつつ見上げた、その背後から──。
「エレベーターも知らないのかよ」
昨日も聞いた、ひやりと冷たい声音が鼓膜を揺らした。