第2章 わるいこ
「んじゃ伊地知、僕の家までよろしく〜」
後部座席に座った僕はを横抱きにして膝の上に置き、運転席に座る伊地知にそう指示をする。
すると伊地知は「え、高専じゃないんですか…?」と言いながら車を走らせ始めた。
「はぁ〜?伊地知ってやっぱ馬鹿でしょ。こんな小さい子を高専に置いてたら、上が何するかわかんないでしょ〜が」
「……つ、つまり?」
嫌な予感がする、と言いたげな伊地知の口調に少しだけ腹が立ったので、期待に答えてあげることにした。
「は僕の家で保護することにした。因みに今決めたから、上には言ってないよ!」
「あああ………………」
「なんだよ」
「いえ、……なんでもないです…」
何でもない、と言いつつも伊地知はボソボソと心の声が漏れている。
「上に怒られなければいいですが…というより五条さんの家に置く方が危険なのでは?」なんて、失礼しちゃう。
「こんな小さな子相手に間違い犯してたまるかよ」
「えっ!?な、なな何のことでしょう私は何も言ってません………よね?」
「言ってたけど」
「言ってた…………………」
やってしまった、と眉尻を下げる伊地知がミラー越しに見える。
僕は「ま、後は宜しく〜!」とだけ告げ、視線を膝上で眠るに向けた。
(今日は恵とは話さなかったけど、津美紀の方とは上手くいったみたいだね。この調子だと、人に慣れるのも早いかな)
すぅすぅと心地よさそうに眠るの髪を梳く。
出会った時は血でベトベトだった髪も、頬も、今日は綺麗になって僕の膝に眠っている。
(これから同じようなことが無いとは言ってあげられない)
でも、だけど。
の力は呪術界を大きく左右する。
君も恵も、僕と同じくらい強くなれる素質があるんだ。
恵は勿論、もまだ荒削りな部分があるし、僕が傍で教えてやらないと。
(教えるとか、柄じゃないんだけどな〜)
はっと自分を鼻で笑って、僕は窓の外の赤い夕日に目をやった。