第9章 愛する覚悟
目の前で繰り広げられる中学生らしい青い光景に、いい加減飽きがきた頃。
「伊地知、そろそろ撮って。メモリが爆発するくらい連写してよ」
「はっ、はいぃ!!それでは……」
急かすように告げると、伊地知は怯えたように顔を強張らせカメラを構えた。
指先が小刻みに震え、カメラ越しに僕たちを捉えることすら必死なのが嫌でも伝わってくる。
「1+1は〜……?」
「古っ」
「えぇっ!?」
精一杯の勇気を振り絞った伊地知の掛け声は、乾いた風にかき消されそうなほど弱々しく、そして致命的に古臭い。
思わず口に出して突っ込むと、伊地知はファインダーから目を離し、口をぽっかりと開けていた。
「……なんでもいいんで、早くしてくださいよ」
「ふふ、伊地知さん頑張れ〜!」
呆れたように溜息をついた恵の隣で、ナマエが小さく拳を握る。
「ったく、伊地知は上の連中に気圧されてるからそんななんだよ。センスが昭和。……いいよ、声掛けは僕がやる」
僕はわざとらしく肩をすくめてから、
両脇にいたナマエと恵の肩を、逃がさないようにグイッと力強く抱き寄せた。
「ちょっ、力強すぎますって、」
「わっ……ふふ、あったかぁい」
恵は顔をしかめて僕の腕を押し返そうともがき、逆にナマエは甘えるように僕の胸元へと顔を寄せる。
二人の柔らかな体温が、僕の腕の中に確かな重みとして伝わってきた。
「二人とも、ちゃ〜んと笑ってよ〜!!」
今この瞬間だけは、これから呪術師として生きる過酷な運命も、血まみれになって歩む未来も、すべて忘れていい。
心の中で二人に告げ、僕はとびきり明るい声を張り上げた。
「ハイ、チーズ!!」
カシャ、とカメラのシャッターが切られると、
眩いフラッシュの光が、卒業式の立て看板の前に並ぶ僕らの姿を刹那の永遠として焼き付けた。