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【呪術廻戦】呪いの嫁入

第8章 百鬼夜行の、その最中※


掴んだ服は離さないまま、目元だけを空いた片手で覆い隠した。

涙なんて見せたくない。

見せたら最後、恵くんの中の私が、女の子からただの幼なじみに変わってしまう。


「っ……恵くんがしてくれないなら、私が勝手にするから、」


強く涙を拭い、身体を起こした恵くんを追いかけるようにして身を乗り出すと、ぐしゃりと乱暴に髪を撫でられる。


「…落ち着け」


呆れたように吐き捨てられた言葉に、堰き止めたはずの涙が鼻の奥をツンと刺す。


(落ち着いたら、止めちゃうくせに)


そう心の中で呟きながら、俯いた視線の先。

そこにはさっきまで私の中に入ろうとしていた恵くんの熱が、硬さを失っているのが見えた。


───男の人は、一度興奮が冷めると最後まで出来ないらしい。


そんな断片的な知識が、今、目の前の残酷な現実として突きつけられ、心臓の奥がじりじりと凍りついていく。


「もう、できない……?」


震える声でそう問いかけた私を、恵くんは酷く複雑な、それでいてどこか諦めたような瞳で見つめていた。


「……今は、入らねぇ」
「っ、」


拒絶。
その二文字が頭をよぎり、奥歯を噛み締める。

やっぱり私はまだ、恵くんとって"壊せない幼馴染"のままなんだ。

そう思い知らされた瞬間、視界がまた滲み、掴んでいた服から手を離そうとした───その時。


「……勘違いすんな」


低い、地這うような声が鼓膜を震わせた。

離れようとした私の手首を、恵くんの大きな手が強く、優しく掴み寄せる。


「お前は悪くない。ちゃんと解さなかった俺が悪い」
「……え?」
「だから『痛くてもいい』とか、二度と言うな。……俺が、良くねえから」


吐き捨てるように告げた恵くんは私の頬を包み込み、涙の痕を親指でなぞるように拭った。

月明かりを反射する暗い瞳には、今、私一人だけが映し出されている。


「……準備し直す。…手伝ってくれ」


そんな低い囁きとともに、恵くんはまた、私の唇を深く食むように奪った。


(あ……)


さっきまでの躊躇いなんて微塵も感じさせない、執拗で、熱い舌の侵入に、冷めかけた心臓が火照りだす。

その熱量に呼応するように、一度静まったはずの恵くんの昂りが脈打ち始めるのを感じた。
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