第8章 百鬼夜行の、その最中※
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頭がふわふわする。
何度も、何度も身体の弱い場所を暴かれ、恵くんの意のままに翻弄されて。
頭の中が真っ白に塗り替えられたときには、恵くんの硬い昂りが、散々愛された泥濘に添えられていた。
(あ………入って、くる)
確かめるように、少しずつ、慎重に推し進められるその肉塊に、内側がみりみりと圧迫されていく。
苦しい、痛い。
でも、それを言って止められるのは嫌だった。
一番深く人と繋がれる方法はこれなのだと、お互いが幸せを共有できる儀式なのだと、電子の海で学んだ。
───だから。
「ナマエ、」
「っ、きもちい、から……っ、もっと……っ」
どれだけ誘惑の言葉を重ねても、恵くんの優しさが消えることはない。
私が痛みを感じているのを悟れば、恵くんはきっと、すぐに身を引いてしまう。
(……そんなのやだ。…まだ、離れてほしくない)
行かないでと縋るように、おろしたてのスウェットを指が白くなるほど強く掴んだ。
「…痛えか」
「いたく、……っない、」
「無理すんな」
「や……っ、」
恵くんの身体が離れていくのと同時に、中の圧迫感が外へと逃げていく。
嫌だ、やだ。
だって今しなきゃ────恵くんがまた、触れてくれなくなっちゃう。
「お願いっ……我慢できるから、最後までして…っ!」
「………」
私を壊すのが怖いと言った。その優しさは紛れもない本物だと信じてる。
だからこそ、
今ここでちゃんと壊されて見せなければ、恵くんはまた、臆病な優しさの中に引き戻されてしまう。
そんなのは耐えられない。
「ダメだ。ちゃんと慣れさせてから挿れねぇと、血が出たりする……らしい」
「そんなの、どうでもいいの…!」
「…っ、」
気遣いの言葉を遮るように、叫びにも似た声を響かせた。
血も、痛みも、そんなものはどうでもいい。
今の私に必要なのは、恵くんと同じ気持ちだという、逃れようのない証明だけ。
「好きなの……大好きだから、止めてほしくない…っ、」
声が震え、視界が熱く歪む。
ああ、私はやっぱり、どこまでもズルい女だ。
そう自覚しても、
目尻から溢れ出す生暖かい雫は、止める術も分からないままシーツを濡らしていった。